SaaS KPI完全解説:ARR・MRR・LTV・CACの計算と改善法

はじめに

SaaS(Software as a Service)ビジネスにおいて、KPI(重要業績評価指標)は成長の方向性を示す羅針盤です。ARR、MRR、LTV、CACといった指標は、投資家や経営者にとっての「信頼の基準」であると同時に、現場担当者が改善アクションを取るための具体的な道しるべにもなります。

本記事では、基本的なKPIの定義から計算方法、そして改善に向けた実践的アプローチまでを徹底解説します。大企業のCFOから、中小企業でDXを模索する経営者まで、幅広い層に役立つ内容です。

ARRとMRR:SaaSの基盤を支える収益指標

ARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)

  • 定義:1年間におけるサブスクリプション契約からの安定的な収益。
  • 計算式:ARR = MRR × 12
  • ポイント:ARRは投資家が最も注目する指標のひとつ。事業価値の算定や企業評価(Valuation)の基礎にもなる。

MRR(Monthly Recurring Revenue:月次経常収益)

  • 定義:毎月の定期収益。
  • 計算式:MRR = Σ(顧客ごとの月額利用料)
  • 分解観点:
    • New MRR:新規顧客からの収益
    • Expansion MRR:アップセル・クロスセルによる収益増加
    • Churn MRR:解約による収益減少

👉 MRRの増減をトラッキングすることで、事業の健康状態が可視化されます。

CAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得コスト)

  • 定義:1人の顧客を獲得するためにかかった平均コスト。
  • 計算式:CAC = (営業費用 + マーケティング費用) ÷ 新規獲得顧客数
  • 注意点:
    • BtoB SaaSはCACが高騰しやすい。広告費・人件費・営業活動を含めて精緻に算定。
    • 中小企業でも、「見込み顧客を獲得するコスト」まで分解すると改善余地が見える。

👉 CACを抑えることは 効率的な営業・マーケ体制の構築 につながります。

LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)

  • 定義:顧客が契約期間を通じてもたらす総収益。

計算式

  • シンプル版:LTV = ARPU × 継続月数
  • 高度版:LTV = (ARPU × 粗利率) ÷ 解約率

ポイント:SaaSは「解約率(Churn Rate)」に強く依存。解約率が1%改善するだけで、LTVは大きく増加します。

👉 中小企業では 「少数顧客でも長く継続してもらう仕組み」 を作ることが最重要。

LTV/CAC比率で見るSaaSの健全性

基本ルール:LTV / CAC ≥ 3 が理想。

例:CAC = 100,000円、LTV = 300,000円 → LTV/CAC = 3で健全。

逆に2以下の場合は、営業コストが高すぎるか、顧客の継続率が低い可能性があります。投資家はこの比率を必ずチェックします。

改善に向けた実践アプローチ

1. ARR/MRR改善策

  • アップセル・クロスセル商品の設計(上位プラン機能の明確化・アドオン販売)
  • 年額プラン割引でARRを安定化
  • 解約防止のオンボーディング強化(価値訴求の定着・ヘルススコア管理)

2. CAC改善策

  • マーケチャネルごとのROIを可視化(広告・SEO・セミナー・紹介の比較)
  • インサイドセールスのプロセス自動化(スコアリング・メール/DM自動化・AI補助)
  • ペルソナ精度を高め、無駄配信を削減(不一致セグメントの除外)

3. LTV改善策

  • NPS(顧客推奨度)調査で解約予兆を検知
  • CS(カスタマーサクセス)による定期フォローと価値提案
  • 継続利用を促す仕組み(学習教材・ケーススタディ・定期アップデート)

中小企業にとってのKPI活用法

  • 紙・Excel中心の業務からの脱却:SaaS導入で売上や顧客データが自動で数字化。
  • 営業改善の武器:CACを計測して「高い広告」「安いチャネル」を把握。
  • 経営の見える化:ARRやLTVで「事業の将来価値」を把握し、金融機関への説明力も強化。

補足:NRR/NDRと活性指標(North Star Metric)

NDR(Net Dollar Retention)は既存顧客の収益拡大を示す重要指標。NDR = 期末MRR ÷ 期初MRR × 100%。120%超はプロダクト主導成長(PLG)の好シグナルです。

また、週次アクティブチーム数やワークフロー完了数など、顧客の成功体験に最短距離で結び付く“北極星”の活性指標を1つ定義して追いましょう。

まとめ

SaaSビジネスの成長は、ARR・MRR・CAC・LTVという4つのKPIによって可視化されます。これらを正しく計測し改善することで、投資家からの信頼を獲得できるだけでなく、中小企業にとっても効率的な経営改善が可能となります。

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